日本代表の現状を知るべく2018年12月22日(土)・23日(日)に行われたJBAコーチカンファレンスに行ってきました。参加料は、1日あたり4,000円とお高めですが、東野さんと萩原さんのお話が聞けるということで、迷わず申し込みました。そこで語られた内容のメモを公開します。
もくじ
開催概要
【タイトル】
第4回 JBAコーチカンファレンス/4th JBA Coach Conference
【日程及び内容】
○2018年12月22日(土)
第1部 「“Japan’s way (日本のバスケットボールが追求していくこと)” について」
JBA 理事/技術委員長 東野 智弥
第2部 「スポーツ・インテグリティについて考える」
JBA指導者養成部会
○2018年12月23日(日)
第3部 「女子選手の育成、アジア・世界の状況について
~U17女子ワールドカップ・U18女子アジア選手権より~」
JBAジュニア専任コーチ 萩原 美樹子
第4部 「2016年からの男子日本代表の取り組みから、今後の選手育成を考える」
男子日本代表サポートスタッフ 鈴木 良和 (株式会社ERUTLUC)
【会場】
日本大学文理学部 百周年記念館 2F国際会議場
“Japan’s way (日本のバスケットボールが追求していくこと)” について
講師:JBA理事/技術委員長 東野智弥
・2016年4月に技術委員会が発足
・ジャカルタのお詫び
・スローガン「バスケで日本を元気に」はJBAに尽力してくれている関根さんが作った。
・男子日本代表の現状 4連敗からの6連勝(Windows5時点)
・篠山選手が決して字はうまくないが、4連敗後の崖っぷちの状況で「日本一丸」の文字を掲げて日本が一つになれた。
・「Japan’s way」はJBAの各部会が一丸となってやっていく必要がある。
・日本バスケの3つの問題点は「フィジカルコンタクト」「リバウンド」「シュート力」。技術的な問題だけではない
・トップリーグが分裂していた頃、オリンピック委員会からの制裁があった。その理由は、ガバナンスと代表が弱いということ
・W杯まであと252日、オリンピックまではあと581日。この数字を毎日意識しながら日本バスケの技術向上に尽力している。
・ちなみに12/21はバスケの日
・バスケの世界での競技人口は4.5億人(1位)、日本では63万人(2位、1位はサッカーの96万人)
・スラムダンク、MJの時代は日本でも100万人以上いた。
・オリンピックの選考は2019/3に決まる。
・女子はほぼオリンピック出場が決まっている。男子は2/21、2/24のWindow6次第
・男子の現状はFIBAランク47位であり、他のオリンピック参加国のようなNBA選手、Euroリーグの選手は所属していない。渡邉選手、八村選手によってそれが実現されようとしている。
・日本を強くするには、アンダーカテゴリからシニアカテゴリまでの一気通貫の教育が必要。女子はそれがほぼ実現している。
・後は、給料の問題もある。B1リーグ所属選手の平均年棒は約1,000万円。日本代表クラスの選手でも約2,000万円と言われている。NBAはその100倍。この差を埋めていくことが優秀な人材を確保するために絶対に必要なこと。
・現在、技術委員会では男女問わず色々な機関と情報共有を行い、「Japan’s way」の実現とともに日本代表選手の強化に努めている。
女子選手の育成、アジア・世界の状況について~U17女子ワールドカップ・U18女子アジア選手権より~
講師:JBA ジュニア専任コーチ 萩原美樹子
自己紹介
現在、U16,17,18,19を担当している。育成ではU14,15。U19が最初、次がU16そこで2位。その前はアシスタントコーチでやってきている。全てのカテゴリで課題は同じだったと感じた。今日は、その中で感じた日本代表の状況と課題を説明する。
みんなの代表を強くしたい!!!
シニア代表につながる一気通貫の選手を作っていきたいというコンセプト。現在のシニア代表のほとんどはU16から経験している。ジュニアだけで56万人いる。少しでも強豪国よりも上にいきたい
U19 世界4位、U16 アジア2位→U17 世界7位(接戦で負けるケースが多かった)、U18 アジア2位。ジュニア女子はJIBAランク世界11位(史上最高位)。これを10位以内にあげたい
インターハイとかぶるなど国内大会との時間調整が難しい。その結果、合宿日程が限られることになる。高校生は各チームの主力なので土日は集められないので、月火水の平日でやっている。しかし、月曜日は土日の試合で疲れているので休ませないといけない。
試合の責任は私が負っている。それを作っているのはみなさん。普段の指導現場でのみなさんの力をぜひ貸して欲しい。
1.女子アンダーカテゴリで抱えている課題
日本の良いところは、
- トランジションの速さ
- 豊富な運動量
- ドライブは他の国より1.5倍くらい早い
- ボールの扱いに長けている
- 粘り強く守る
- ボールマンへのプレッシャーにより、相手に時間を使わせる→24秒バイオレーション
- 「みんな」でプレーする。Discipline
他の国から規律正しいというコメントをもらう。文句を言わず黙々やる。しかし、これは課題でもあり、もう少し喋ってもいい。
海外の選手は、アンダーカテゴリではそれほどボールの扱いがうまくない選手が多い。日本は、小さいので足を生かす。ボールを取りに行く必要はないがハーフコートに運ばせるのをなるべく遅らせたい。ディナイをしてボールラインを押し上げる。
トランジションを決められると相手のコーチはものすごく怒る。全得点のうち30%がファーストブレイク。これはできているが残り70%が課題。
長身者の選手がリバウンドを取った後に自分でゴールまでアタックするのは非常に大事(ガードを探すのではなく)。
課題は、どのカテゴリも共通だと感じた。
- コンタクトに弱い、めっぽう弱い、嫌い
- ドライブスキル 早いけどフィニッシュが弱い デイフェンスを見ていない
- ハーフコートオフェンス 残り70%の課題 約束事の遂行 スクリーンを教えるのが難しい
- ポストディフェンス ヘルプはうまいけど、ポストマンのディフェンス 後ろに立っているケースが多い。コンタクトしていいポジションを取らせないことが大事
- リバウンド ボックスアウト ボールを追いかけてしまう マークマンに飛び込まれる。海外ではリバウンドを非常に取りに来る。日本はあまり来ない。マークマンに一度当たる必要がある。
- トランジションディフェンス マークマンを探して安心する。ボール無関係でディフェンスする。リムラン。大きい選手をガード選手が捉えるとそのマークマンがフリーで3を決められる
- 3ポイントの確率 U16はアジア大会で24.8%。もう少しあげたい。
課題1:ドライブは日本の生命線!
ドライブの速度は速いが、フィニッシュまで行けないことが多い。まず、ドライブが迂回するので、ドライブが膨らむことが多い。合わせをしてない。見ていない。ドライブ時に踏切が早い選手が多い。なるべくペイントエリアに侵入したい。後はフィニッシュでの工夫(抜けていてもブロックされる)。ドリブルでもう一歩踏み込む→協会のページでもこのためのドリルは観れると思う。
ドライブ時にディフェンス(ヘルプを含め)を見ていない。ボールを持っていない人の動き(合わせ、スペース)が足りない 特にコーナー。
間合いがあるディフェンスに対するオフェンスも課題。間合いを開けられてドライブで潰される。
課題2:ハーフコートオフェンス
ボールのところで何が起こっている?合わせの動きに目的がない。待っているのが悪だと考える人、動きすぎている人。ボールを持ってない人が、ボールを持っている人が何をしたいのか考える。スペース:コーナーの使い方、パスの距離(5mから7mが最適)だんだん広がっていく。約束事の理解と遂行が必要。なんで動いた?再現できない、説明できない、これは感覚で動いている証拠。
スクリーンプレー。約束事の典型プレー。スイッチされているのに気づかない。スクリーンがかかっていない。スクリーンの知識がないので、スクリーンディフェンスも弱い。
シュートセレクションが悪い。ドライブで崩してディフェンスを集めて外にキックしてアウトサイトシュート。パスで崩して、ドライブ。
「いいオフェンスとは?」
ドライブだけで崩すのは難しい。他の国の真似だけでは勝てないが、日本も合理的なところ(ピックなど)を取り入れて日本らしさを出していく。スクリーンを一切やったことがないという子が多い。やってないからわからない。
他の国はほとんどピック。ハイピックが多い。ハイピックのディフェンスは難しい。ポストアップに対してボールマンとマークマンの間に入らないといけない。バンプして外に追い出す。
リバウンド
リバウンドも課題。転んでしまう。その後、リバウンドを取られるというケースが多い。自分のマークマンを確認して満足している。ボールが先行しているケースではそれではいけない。ボールラインにしっかりと追いつく。リバウンドは永遠の課題。
ボールを見てしまうことを我々はBall watchと呼んでいる。シューターのボックスアウトも大切。ガードの選手のボックスアウトが弱い(国内ではあまりガードでリバウンドがうまい人がいないからだと思う)フリースローのボックスアウトにも積極的に取り組んでいる。国際ゲームはフリースローのリバウンドにかなり飛び込んでくる。
後は、ショットの逆サイドへのボックスアウトも大事。コーナー、ウィングにいる選手に一回体をあてに行けと教えている。シュートは逆サイドに落ちる確率が高い。なので海外選手は逆サイドから飛び込んでくる。
U19では、逆サイドのボックスアウトでうまくいったケースが増えた。フリースローのボックスアウトについては、前向きでのいいから相手を捉える。
自分で考え、責任を持つ
海外の選手は、言われたこと以上のことを自分の責任でリスクを負ってやろうとする選手が多い。日本は言われたことをきっちりと黙々とやる姿勢は良いが。海外の選手はブザービーターが多い。3位決定戦のカナダ戦は1、2、3Qの終了間際にブザービーターをやられた。海外の選手は目の前の相手を破ってやろうという気持ちが強い。自分の責任で自分がリスクを負ってやるという気持ちが大事。
目指したいバスケット
ボールマンとの間合いを詰めてプレッシャーをかけ続ける。コンタクトを厭わない。タフなシュートを打たせてリバウンドを5人でとる。五人で走る。まずはファーストブレイク。ボールをシェアし、コートを広く使い、全員がゴールに攻める。自分のディフェンスがヘルプに行ったら、必ず合わせて動く。
海外の大きい選手はトップオブザキーからドライブしてくる。大きい選手がゴールと正対した状況でのプレーに慣れてほしい。野口選手(180cm)のように。
ペイントエリアを攻める。オフェンスリバウンドにチャレンジする。
理想は、
「自分で考え、相手に立ち向かい、味方を鼓舞してタフにチャレンジし続ける選手」
ピックは簡単にギャップを作る合理的なプレー。他国の真似では勝てないという人もいるが、良いプレーは取り入れて日本用にアレンジしていくのが良いと考えている。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
バスケ315!
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